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「未知の強さ」


 Uクリーチャーというものはその存在すべてが謎で構成されている。どんな場所で生まれ、どのような進化を遂げ、なぜ地球を襲うのか。
 だからUクリーチャーがどうやって出現するのか。その根本的な謎に、目が行かなかった。



「そもそもおかしいんです、世界各地で出現しているUクリーチャーが、なぜこの小さな列島に偏って現れるのか」

 普段しどろもどろに話すことが多い佐里だけど、自分の考えを説明するときは饒舌になる。
 食堂で一緒にご飯を食べるとき、いつもなら私が一方的に世間話をして、佐里が相づちを打つ程度だけど、この時ばかりは立場が逆転していた。

「たまにワイドショーでも言ってる事ね」

 Uクリーチャーの出現はランダムだけど、出現頻度を調べると奇妙なことに日本だけ変に偏っていることがわかる。一ヶ月のうちに発生するUクリーチャーの数は日本以外と日本がほぼ同じだという。シノビが日本のFUMAを拠点に選んだのもそんな理由があるからだそうだ。
 そのため日本に恨みを持つ何者かがUクリーチャーを作っているのではないか、逆に日本の誰かが作っているのでは、宇宙人は日本に興味があるのでは。いろいろな説が様々なメディアで報じられているが、説得力のある解答はまだ出てこない。
 日本が舞台のSFだと、資源が豊富だとか汚染された空気が好都合とか、列島の形が独特だから目に付くとかいろんな話があったっけ。「動物園のパンダを狙いに」なんて話もあったけど、その宇宙人は中国に行った方が早いんじゃないかな。

「で、それを疑問に思った佐里はどんな解答を出したのかしら」

 佐里がここまで熱弁するんだ。きっと革新的な新説を思いついたに違いない。ちょっとした期待感を感じながら、カレーのシミが残るスプーンをマイクに見立てて佐里の口元に向けてみると。

「・・・・・」

 顎に手を当てて黙りこくってしまった。何もないんかい。

「ち、違うんです。思いついてるのはあるんですが、えと、証拠は全くないから言いにくいっていうか・・・」

 いつものしどろもどろな佐里が戻ってきた。佐里のいいところは人の気づかないところに目がいくところだけど、悪いところはその性格故なかなか口に出さないところだ。
 その引っ込み思案なせいで、ならなくていいピンチになったこともある。今回だってきっといいアイディアを持っているに違いないんだ。

「今はただのガールズトーク。変なことや的を得ないことを言ったって怒る人なんていないわ。言ってみて」

 それでも出会った当初からはかなり成長しているんだ。後一押しすれば、佐里だって変われるはず。
 会う人全てに目つきが悪いと言われる顔で、できるだけ柔和な笑顔で佐里の目を見ると、見つめ返す佐里の瞳に少し力が戻った。

「・・・Uクリーチャーが現れる際、特殊な電波が発生しているのは知ってますよね」

 地震が起きる際、主要動のS波が流れる前に初期微動と呼ばれる小さな揺れを起こすP波というのが発生する。最近の地震予測はそれを感知して直前に注意を促すようになっている。
 それと同じように、大半のUクリーチャーが発生する直前には不審な電波が感知される。しかしP波と違い、探知からものの数秒でUクリーチャーが発生するので、予測には使えない。震源から離れれば時間差が生まれる地震とは違い、Uクリーチャーは震源地にしか被害が出ない災害だしね。
 というわけでUクリーチャー発生前兆電波、通称U波は認知こそされども見つけ次第戦闘準備、倒した後のUクリーチャーの痕跡調査に追われ、各国の防衛隊もろくに研究はしてこなかった。

「でもUクリーチャーの正体がまだつかめない以上、どんな小さな現象でも調べてみる必要があると思うんです。電波ということは発生源はあるはず。私の予測では日本に近い地中にUクリーチャーを生む、あるいは呼び出す何かがあると―――」


    ※


 その翌日。
 佐里は消えた。

「インターホン押しても反応はないし、電気がついている感じもないですね」

 昼勤を済ませ帰宅した後、今日の当直時間になっても来ない。不審がった私が佐里の家に行くも、そこはもぬけのからとなっていた。
 勤務外だから佐里もTバスターを持ってないので、レーダーで追跡することもできない。電話はさっき試したが返ってくるのは「電波の届かないところにいるか・・・」である。

『これもきっとUクリーチャーの仕業ですよ!』

 Tバスターのモニターには、心配を全面に出した劾の顔がドアップで映されていた。
 由来も不明、何をしでかすかも不明なUクリーチャーだけに、ちょっと不思議なことがあればUクリーチャーのせいにする輩が頻出している。それどころか「どうして朝は眠いんだ」「Uクリーチャーのせいなのね」などと揶揄され、「Uクリーチャーのせい」は流行語になりつつある。
 人より多くUCに関わる仕事をしているだけに劾の言い分は一般人が使うよりも信憑性高いけど、ちょっとそれは早計過ぎやしないだろうか。

『まだ半日だ。彼女の事情かもしれない』

 興奮したままの劾を押し退け、冷静さを保ってくれる風城キャップが代わった。

「ですね。今は警察に捜索願いを出すだけにしましょう」

 とはいえ、昨日Uクリーチャーの核心に迫りそうな話をした翌日の失踪。私も劾と同じく不審な気配を感じざるを得ない。
 通信を切り、私の中のノイチに話しかけてみる。

「ノイチ、昨日佐里が言ってたことって本当?」
―――わかりません。でも怪獣が自然発生する確率はかなり低く、佐里さんが言うみたいにある一点に発生する何かがあると考えるのは妥当かと
「発生する何かというと・・・」
―――誰かが装置のようなものを設置した、と考えるのが一番筋が通りますね

 佐里の仮説が正しかったとすれば、立証されればその誰かが不利になる。その前に佐里を消したとすれば合点は行くだろう。
 ただ、その話を聞いたのは私だけだ。誰かが立ち聞きしてたとしても、FUMAの誰か・・・

―――裏切り者がいる?

 前にこれを思い出したときはまさかと思ったけど、今回は笑い飛ばすことはできそうにない。
 だとすれば、佐里の説を他の人に相談するのは難しいだろう。

―――兄さんはいいんじゃないですか?
「駄目よ。疑心暗鬼の目で見だしてボロを出すから」
―――あー・・・

 妹よ、自分で言っておいてあれだけど少しは兄を信じてあげなさい。
 それはさておき、佐里が戻ってくるのを待っても仕方ない。検証は私がやるしかないだろうか。

「もし私も襲われたら、ノイチ、お願いね」
―――もちろんです


    ※


 とは言ったものの。

「これのいったい何パーセントが、私が求めてるデータなんでしょうね・・・」

 U波の研究がされてないということは、防衛隊での記録もろくにされてないわけで。いろんな電波を観測しているところから見つけだすしかない。世界中の電波観測機の観測結果が集まるデータベースを開いた私は、その膨大なデータ数に唖然としていた。
 パソコンとはネット掲示板を見るかゲームをするためのものと認識している私には、羅列されている数字や文章が何を意味しているのか、ほとんど理解できない。

「ノイチ、パソコン強い?」
―――地球の演算機は技術がどの程度劣っているか把握していませんから

 地球を馬鹿にしながら自分の無力を語るんじゃない。
 表計算ソフトの使い方サイトとにらめっこしつつ、Uクリーチャーの出現と同じ時間、同じ場所で観測されたU波と思われる電波をピックアップすることができた。この間わずか一週間。佐里なら一日で済ませただろう。
 この期間は、佐里が消息を絶ってからの時間も意味していた。食事も与えられずにどこかで監禁されているとしたら、そろそろまずい時間が流れてしまった。いい加減けりをつけないと。
 集めたデータを3DCGの地球儀に載せる。林檎の表面に黴が生えるように、無数の黄色い線が青い地球に表示される。そこから見えたことは―――

「佐里、やっぱりあなた、天才よ」

 地表に打たれた無数のUクリーチャー出現地点。そこから伸びる電波発生方向の線は、そのほとんどが日本、関東地方直下の一点で交差していた。


    ※


「ポイント610の地下34キロ、ここにUクリーチャーの発生させる何かが存在すると思われます」

 翌日、私は早速一課のブリーフィングで一週間の成果を公表した。
 すでに探索、撃破プランも構築済みだ。万が一この中に裏切り者がいたとしても、いっぺんに隊員全員で共有して、迅速に動いてしまえば陰で何かすることはできない。

「すごいっすね真矢さん!僕らの知らないところでそんなことやっていたなんて!」
「私に相談せずに事を進めていたのは少しいただけないが、ここまで明確な結果が出ると文句のつけようがないな」

 佐里以外の裏切り者候補、劾とキャップの反応はいつも通りといったところか。さすがに的を突かれてぼろを出すような相手じゃないだろう。
 ちなみに翔は、いつも以上に無愛想な表情でモニターを見ていた。ノイチを介したテレパシーを使わなくても、「俺のいないところで危ないことしやがって・・・」と顔に書いてある。

「地中の深さから推定して、ここはモホロビチッチ不連続面の一部だと思われます。少し距離はありますが、以前Uクリーチャーがポイント049に作った大穴を利用すれば容易に行くことができると思います」

 以前現れたUクリーチャーは、公園に大穴を開けてモホ面への道を作った。私がエスパークラーを拾い、シノビの正体に迫ったあの事件だ。今思うとかなりこっ恥ずかしいことをしたもんだ。
 現在もその公園はFUMAによって立ち入り禁止区域にされ、モホ面の調査に利用されている。

「いいだろう。善は急げだ。雑賀は《ランドディグ》、伊達は《ウッドチェイサー》でポイント049のホールからモホ面に突入、ポイント610の調査に向かえ。私と甲坂はCICからサポートに回る」
「「「アイサー!」」」


    ※


 前回は土壁を崩さないようにおっかなびっくり降下したけど、今では設置されたエレベーターに乗って安全に降りることができる。世界最大62キロのエレベーターだ。
 しかしまあ、退屈だ。世界最速の分速1200メートルを誇るが、それでも最下層まで50分と少し。世界最大で世界最速で世界最長、三冠王だ。ついでに世界最悪の乗り心地も追加で。
 もっとも、ここは高級ホテルでも観光タワーでもない。わがままなんて言う権利はないので、持参した漫画を読んで暇を潰す。今から最後の戦いが始まるかもしれないというのに、我ながら暢気なものだ。

『そろそろ地底だ、準備しろ』

 翔の声で、視線をメーターに向ける。海抜マイナス61キロ。そろそろモホロビチッチ不連続面が見えてくる頃だ。
 前回とは違い、このエレベーターの周囲には掘削機械や探査装置、調査員たちの拠点となるプレハブ小屋が並び、やや明るくなった地底が見え・・・なかった。

「え!?」

 土の壁を抜けると、そこには破壊された機械、踏みつぶされた装置、灰になったプレハブ小屋。すべてが壊滅した後の光景が広がっていた。

『生存反応なし・・・どうなってるんだ』

 《ウッドチェイサー》のセンサーをフルに広げても、生きた人間の反応は見られない。
 このモホ面に入った人間はFUMAのみ。ならば考えられることは一つ。Uクリーチャーだ。

「《ランドディグ》よりCIC、モホ面調査隊は壊滅しています、指示をお願いします」

 このまま無視して610に向かうわけにはいかない。かといって独断行動するのも引ける。まずは地上のキャップたちに報告だ。
 しかし返ってくるのは耳障りなノイズばかりだった。

『おい、なんか言えよ!キャップ!劾!』

 今通ってきた大穴には、通信用ケーブルが通されている。それを経由すれば数十キロ離れた地下でも、比較的安定した通信ができるはず・・・
 と思い、通ってきた穴を見上げて血の気が引いた。

「翔!ペイルアウトして!早く!」

 《ウッドチェイサー》に叫びながら、こちらも脱出レバーを引く。
 私と翔を乗せたシートがエレベーターから離れた次の瞬間、無数の土砂が二機のライドメカを押しつぶした。

「なんだ・・・こりゃ」

 流れ落ちる土砂は留まるところを知らず、そのまま通ってきた穴を塞いでしまった。
 どこかへと消えた土砂がどこからともなく戻ってきたのだろうか。理由はわからないが、私たちが降りたタイミングで退路を絶たれた。作意的なものを感じざるを得ない。

「おいおい・・・マジかよ」

 脱出シートから離れた翔が、周囲を見回しながら舌打ちする。
 他に音を出すものがない上、天井の土壁で大きな音なら反響するモホ面だ。暗い視界でも遠くから何かがやってくるのはわかる。
 無数のUクリーチャーのうなり声は、全方位から聞こえてきた。

―――感じるだけで百と少しですか・・・

 ノイチの声が震えているのは、武者震いかそれともただの恐怖か。おそらく後者だろう、だって私も怖いもん。

「ノイチ、お前の持ってるスパークブレードに、テレポートできるUクリーチャーがあったよな」
―――え、うん
「真矢とお前はそれで基地に戻れ。キャップたちに報告して、増援を呼べ」

 そう言いながら、翔は左手のエスパークラーを構えた。

「いやいや、あんな数のUクリーチャー相手にする気?」
「誰が相手するか。逃げ回るさ、時々時間を止めてな」

 ウルトラマンになって全員ぶっ倒すなんてアホなことを言い出すかと思ったけど、そこまでアホではなかったようだ。
 幸い壊されてはいるけど調査隊が残した建物や重機、隠れる場所は結構ある。気配からして40メートル級ばかりだし、2メートル弱の翔なら早々見つからないかも。

「わかった。無茶しないでよ」

 翔がしっかり頷くのを確認して、胸元のヌルスパークにスパークブレードを装着する。
 手をかざすと、一瞬で私の体が黒いUクリーチャーに変わる。さらに一瞬で視界が変わり、気がつくとそこはすでにFUMA関東支部CICの前の廊下だった。

「そういえば、私が突然現れたらキャップたちが怪しむんじゃ・・・」
―――そうも言ってられないでしょう。いざとなったら私のことバラしてもいいです

 おや、今までさんざんひた隠しにしてきたノイチがそんなことを言うなんて。みんな姿を知っているシノビはともかく、突然ノイチを出してもみんな信用してくれるか・・・まあいいや。
 自動ドアをくぐり、CICの中に入る。そこには通信が途切れて慌てているキャップと劾が・・・いなかった。

「やあ、早かったな。雑賀」
「真矢・・・さん」

 いや、二人ともいた。ただ、その光景は想像だにしないものだ。
 長年共に働き、共に戦ってきた仲間に向かって、今更こんな質問をするとは思わなかった。

「あなた・・・誰?」

 首に巻かれた触手につり上げられた劾が、壁に叩きつけられている。
 そしてキャップは見たこともない醜悪な笑みを浮かべ。

 その触手は、キャップの肩から伸びていた。


「世界の価値」





今回から最終章に入ります。

というか次回最終回です。あるいは次々回。もしくは次々々回・・・

はい。ここまで書いておきながらこの後の展開漠然としか決まってません。どうなるんですかこの後。教えてください。


というわけで、裏切り者の正体はキャップでした。まあ実質3択だしそんなに意外ってもんでもないですね。実はシノビがM78星雲2番目の犯罪者に成り下がったとか、全ては真矢の壮大な自作自演だったとか考えましたが、そこまでひねくれた話にはしません。

詳しい話はキャップが直々に次回お話してくれるでしょう。


再び出ましたモホロビチッチ不連続面。オリオンから数えれば3度目ですね。どれだけ好きなんだ。

ところでモホ面って地殻とマントルの間の空間なので、彼らが立ってる場所はマントルの上なんですよね。マントルって千度くらいはあるはずですが、そういえば真矢さん以前快適とか言ってたな・・・地底文明デロスが栄えるくらいですし、定説が間違ってるんでしょうね。

あとマントルが液体だと勘違いしてる人もいるようですが固体です。マントルが溶けるとマグマになるんです。


そんなわけで次回(か次々回か以下略)にて、1年半近く続いたウルトラマンシノビも完結となります。

どうか暇な方は最後までおつきあいください。
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